万葉集の植物たち

浜北万葉の森公園が好きです。万葉集の植物について書いていきます。

2022-01-01から1年間の記事一覧

ノキシノブ(軒忍)

桜の木についたノキシノブ。 シダの仲間。細かい根を出して樹皮などに着生する着生植物。 細く伸びているのは葉。 葉の裏には胞子嚢が一列に並んでいる。 ノキシノブという名前の由来は、昔の家では古くなると軒によくこの植物がついたから。万葉集では「し…

ウメ(梅)

春の到来を告げる花。良い香りがするのも魅力。 日本には中国から渡来したらしい。一説には遣唐使が中国から持って来たという。 万葉集で多く詠われている植物。 酒坏(さかづき)に梅の花浮け思ふどち飲みての後は散りぬともよし 大伴坂上郎女 巻8-1656 酒杯…

ミツマタ(三椏)

ミツマタの黄色い花が咲き出している。 ミツマタは早春に咲くジンチョウゲ科の花。葉が出る前この時期から花が咲く。名前の由来は枝が必ず三つに(三又に)分かれるから。 ミツマタは万葉集の「さきくさ(三枝)」の候補。他にはジンチョウゲやフクジュソウなど…

ヒカゲノカズラ(日蔭葛)

万葉の森公園のヒカゲノカズラ。 地面を這ってぐんぐんのびている。冬でも枯れないで、鮮やかな緑のまま。 さらに刈り取ったあと数ヶ月間も鮮やかな緑のまま。そのためか古代から神聖な植物とされ、神事などの際に髪に挿したり、輪にして頭に飾ったりしたと…

イスノキ(柞)と虫こぶ

万葉の森公園のイスノキにできた虫こぶ(虫えい)。イスノキではアブラムシの刺激で葉に虫こぶができる。 これが成長すると最初の写真のような虫こぶになる。これはちょっと小さめ。 アブラムシの出て行った後には直径5ミリくらいの穴ができ、そこに唇をあて…

アセビ(馬酔木)

アセビが咲き出した。 これから5月ぐらいまで花を増やして咲き続ける。風に吹かれるといっぱいついた花が擦れ合ってシャラシャラと音を立てるような気がして好きだ。木全体に毒があり口に入れると酔ったように痺れるから「馬酔木」という漢字があてられてい…

カンアオイ(寒葵)

冬も枯れないウマノスズクサ科の植物 カンアオイ。万葉集の「あふひ」の候補。 花は葉の下、地面に接して咲くので見つけにくい。葉をかき分けるようにすると見ることができる。 梨棗黍に粟嗣ぎ延(は)ふ田葛(くず)の後も逢はむと葵花咲く 巻16-3834

アブラナ(ナノハナ)

万葉の森公園のアブラナ。アブラナは弥生時代から食用として栽培されていたという。万葉集では「くくたち(茎立)」。茎が立ち上がる姿が名前の由来らしい。 上野(かみつけ)の佐野の茎立折りはやし吾(あれ)は待たむゑ今年来(こ)ずとも 巻14-3406 「上野の佐野…

ニッポンタチバナの起源

昨年11月に「タチバナの起源 沖縄だった」という記事が新聞に載った。最近のゲノム解析の結果、日本古来のニッポンタチバナと沖縄古来の柑橘類シークァーサーが同じ親を持つことがわかったという。古事記では不老不死の「トキジクノカクノコノミ(非時香木…

ときじくのかくのこのみ ニッポンタチバナ

古事記には垂仁天皇が田道間守を遣わして常世の国から不老不死の霊薬「ときじくのかくのこのみ」を持ち帰らせたという話がのっている。そして「ときじくのかくのこのみ」はニッポンタチバナのことだという。ニッポンタチバナは日本に昔からある柑橘類で「ヤ…

ヤドリギ 

ミズメの木の高い枝にヤドリギ(万葉集では「ほよ」)が寄生している。右の上に鳥の巣のように見えるのがヤドリギ。ふつう高い枝に寄生するので近くから見れないけど、万葉の森公園ではすぐそばで観察できますよ。 もっと接近すると、 丸く見えるのは実。鳥が…

センダンの実

センダン(万葉集では「あふち」)は晩秋から枝いっぱいに黄色い実をたくさんつけるので遠くからでもよく目立つ。 他の実が鳥に食べられてもセンダンの実はいつまでも残っている。センダンの実を食べる鳥は限られているからだとか。 実の大きさは直径2センチぐ…

冬のイチョウ

葉を落とした後の冬のイチョウもいい。灰色の樹皮が青空にはえて美しい。そばに寄ってみる。幹を触ると樹皮は厚く、押すと弾力がある。イチョウは2億年前から地球にある木。このコルク質の樹皮のおかげで厳しい気候の変化を生き延びてきたらしい。イチョウを…